三階席のメモ

自身の備忘録。気まぐれで追加していきます。

歌舞伎への憂い

山川静夫高橋睦郎

山川静夫

ぼくは声の商売だから、セリフ回しは特に気になります。吉右衛門は緩急、抑揚、速度、全て申し分ありませんでした。声の調節ができないから徹頭徹尾全力投球で声を張る役者が多くなり、最近は聞いていて疲れてしまうことも増えています。さて、これからは高橋さん、どういうふうにして芝居を観ていきましょう。

高橋睦郎

歌舞伎だけじゃなくて、文楽にもいえることですが、若手はがんばっているんでしょうが、技術があっても情が足りない人が増えましたね。技術だけじゃ無理なのが日本の芸能というものでしょう。実生活が出てくるんですよ。

山川

そのとおりです。「最後は人間性でっせ」と竹本住太夫にいわれたことを思い出します。

(「百点対談 名優に捧げる句」『銀座百店』2022年4月 №809)